COLUMN コラム

戦略ストーリーを協働創造するためには、どうすれば良いのか?

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2022.01.04

前回の記事は、価値創造プロセスの最後のプロセスである「戦略の創発」についてお話しました。今回も、引き続き「戦略の創発」について、掘り下げてお話しします。

価値創造プロセスの全体像はこちらとなります。

価値創造のプロセス

3+1意識モデルと、SECIモデルの関係
前回の記事では、戦略の創発とは「一人ひとりの異なるアイディアを統合して、個のアイディアの集合では表現できない、統合された戦略ストーリーを生み出す」ということをお話しし、創発を実現するための協働プロセスとしてSECIモデルをご紹介しました。

前回ご紹介したSECIモデルを以下に再掲します。

背景にある理論
今回の記事では、3+1意識モデルの観点から、SECIモデルの本質を読み解きたいと思います。意識の観点から、SECIモデルを読み解くことによって、より微分的・原因的・身体感覚的にSECIモデルを捉えることができ、理論の理解と実践による体得を両立しやすくなるのではないかと思います。

これまでの記事でもご紹介してきましたが、改めて、3+1意識モデルについて簡単にご説明します。

3+1意識モデル
直感意識とは、「直覚的に、本質や真理、生命(いのち)や愛の存在を感じる意識」のことであり、一言で言えば「一(いち)なるものに統合する意識」です。

これに対して、身体意識は「知覚的に、身体に生じる感覚や感情を捉える意識」であり、一言で言えば「感じる意識」です。

思考意識は、直感意識や身体意識で「直覚、知覚したものを解釈し、意味づける意識」であり、一言で言えば「分別する意識」です。

この3つの意識はお互いに連携しており、直観意識や身体意識が何らかを直覚的・知覚的に認知して、思考意識で判断するという、認知して判断するプロセスを具現化します。

これらの3つの意識とは、少し異なるものがメタ意識です。メタ意識は、「自己(Self)の3つの意識と、それらの意識の範囲にあるものを捉える意識」であり、一言で言えば「見守る意識」です。

3+1意識モデルの概要の説明は以上となります。ここでは、3+1意識モデルの詳細について理解いただくというよりも、それぞれの意識の具体イメージや、関係性について、大枠を捉えて頂ければ十分です。

次に、3+1意識モデルとSECIモデルの関係についてご説明します。これは野中郁次郎教授がSECIモデルにおいてお話ししている内容ではなく、当社独自の解釈になります。

3+1意識モデルと、SECIモデルの関係
SECIモデルにおける4つの知識変換モードについて、3+1意識モデルにおける意識の使い方という観点から説明をすると以下のようになります。

共同化:
直感意識・身体意識で捉えたものを、チームで共有していくプロセス。思考意識によって無理に言語化したり、整理したりする働きを抑えて、直感意識(一部、身体意識も含む)で捉えた感覚をなるべくそのまま共有することがポイントとなります。

そのためにも、メタ意識を用いて、自分がどのように感じているかを俯瞰することや、相手がどのように感じているかをエスノグラフィーすること、すなわち、相手の靴を履くことが大切になります。

表出化:
表出化においては直感意識の働きが鍵となります。直感意識は、さまざまな要素を統合して一なるものを見出していく働きを持ちます。共同化によって、共有されたさまざまな暗黙知に通底するもの、共通するものを直感意識によって見出し、その見出したものが思考意識によって言語化されます。

ここで注意が必要なのは、思考意識による言語化を急がないことです。「知らせがあるまで待つ」という感覚で、閃きが降りてくるまで言語化を急がない方がいいコンセプトを生み出すことにつながります。

連結化:
思考意識を活性化させて、既存の枠組みやアイディアとの整合性を確認したり、位置付けを整理したり、矛盾点や課題を洗い出して解決していきます。思考意識は、「分別する意識」ですから、このような整理や課題解決にとても向いています。

内面化:
思考意識で捉えたものを、身体意識を活性化させながら実践します。実践しながら、どのようなことを身体感覚として捉えているかにアンテナを立てることが大切です。

実践するときの、充実感や違和感などの感覚を大切にすることが、次にくる共同化の内容を豊かにします。

アルーコラム
ここまで、3+1意識モデルとSECIモデルの関係についてお話ししてきましたが、これは概念の整理という話だけではありません。SECIモデルの各知識変換モードにおいて、活性化する意識を紐づけておくことによって、それぞれの知識変換をよりスムーズにうまく実践することができます。

前回の記事で、SECIモデルの4つの知識変換の中でも、個人的な感覚として最も大切にしているのは共同化であることをお伝えしました。共同化においては、直感したことや、経験したことについて、言語化されていない感覚を含めて、対話によって共有していきますが、3+1意識モデルの観点から言えば思考意識優位になってしまうことを避けることが、共同化をうまく実践するポイントとなります。

SECIモデルの本質
SECIモデルを意識の意識化の観点から読み解いていくと、SECIモデルは、いくつかの意識モードを行き来することによって知の創造をしているということに気づきます。

SECIモデルの本質(アルーの解釈)
いくつかの意識モードというのは、どういうことを指すのでしょうか?

一つ目の意識モードとしては、抽象と具体です。

SECIモデルの4象限の図でいえば、上の2つの象限(抽象)と下の2つの象限(具体)のことを指します。上の2つの象限では、人々の直感、アイディア、コンセプトといった抽象的なものを扱います。下の2つの象限では、現実世界の状況や制約を踏まえた方策を検討したり、それを実行したりするという意味で具体的なものを扱います。

3+1意識モデルで言えば、メタ意識・直感意識を主体とした抽象の世界観と、思考意識・身体意識を主体とした具体の世界観という意識モードの違いと表現することができます。

アルー株式会社 コラム
二つ目の意識モードとしては、主客未分離と主客分離です。

主客未分離というのはあまり聞き慣れない表現ですが、主体と客体が分離していない状態を指します。時間の経過を忘れてしまうくらい、何かに没頭した経験を思い起こしてみてください。

没頭している瞬間は、「自分(主体)」と「自分が没頭していること(客体)」の間の境が曖昧な感覚がありませんか?

「自分がそれをしている」という感覚だけでは言い表すことができない「それが自分にそうさせている」という側面を感じたり、あるいは、その表現でも不十分で、「それが自分になっている」とか「それと自分が一体化している」という表現に近い感覚を持ったことはありませんか?

あるいは、何か自分にとって新しいものとか美しいものを見て、心を奪われてしまった経験を思い起こしてみてください。

そのような心を奪われている瞬間は、その事象が目に飛び込んできて、自分の心がそこに惹きつけられ、自分が今何を見ているかとか、何を感じているかを言葉にする間もなく、ただその事象に釘付けになっている、という感覚がありませんか?

これらの感覚が主客未分離です。主体である自分と、客体であるもの・事象・状況が未分離の状態のことを指します。未分離の状態ですから、その状態をその瞬間に言語化することはできません。言語というのは、ある状況からあるもの・概念を切り出すという作用を持ちます。言語で表現する以前の、自分ともの・事象・状況を切り分けたり、もの・事象・状況自体を切り分けたりして、理解する以前の状態とも言えるでしょう。

これに対して、主体と客体を分けた意識モードが主客分離です。普段、私たちが言葉によってコミュニケーションをしている意識モードは、主客分離のモードであると言えます。

SECIモデルの4象限では、左側の2つの象限は主客未分離の意識モード、右側の2つの象限は主客分離の意識モードと捉えることができます。そして、この2つの意識モードを行ったり来たりすることによって、知を創造していると解釈することができます。

3+1意識モデルにおいては、左側の2つの象限は、メタ意識・直感意識・身体意識が中心の主客未分離のモードであり、右側の2つの象限は、思考意識が中心となる主客分離のモードであると解釈することができます。

暗黙知と形式知というのは、意識の使い方として表現すれば、主客未分離と主客分離の違いと言えます。

アルー株式会社 コラム
三つ目の意識モードとしては、個と集合です。

意識モードとしての個と集合というのは、少しわかりにくいかもしれません。個の意識というのはわかりますが、集合の意識というのは聞き慣れない表現ですね。自分と相手が同じような意識をもつことができたときに、それを集合化された意識(集合意識)と呼んでいます。

例えば、組織文化というのは、組織において大切にされていることが共有されている状態として文化になっているという意味で、集合意識の一つと捉えることができるでしょう。

SECIモデルにおいては、共同化は暗黙知の集合化に力点がありますし、連結化においては形式知の集合化に力点があります。左上の右下の象限は、その意味において集合化に力点がある意識モードであると言えます。

一方で、表出化は暗黙知から形式知への変換、内面化は形式知から暗黙知への変換と言えますが、この変換プロセス自体は個人の中で行われるという意味において、個性化に力点がある意識モードであると言えます。

「あれ?コンセプトを考えるような表出化プロセスにおいては、集団で行うこともあるのでは?」

このような疑問をもられた方もいるかもしれません。おっしゃる通り、表出化においても、内面化においても個人ではなく集団で行われることがありますが、暗黙知と形式知の変換自体は、個人の中で行われます。

チームでディスカッションしながらコンセプトを生み出している場面を想定してみましょう。そのときに、ディスカッション自体はチームで行われていますが、ある瞬間の閃きや、暗黙知から形式知への変換はやはり個人の中で行われるのではないでしょうか。

チームでディスカッションしている場合は、「チームで生み出した」という感覚をもちますし、それは大変素晴らしいことですが、その機序を細かくみていくと「チームで共有された暗黙知が、ある瞬間、ある人の中で形式知に変換され、それがチーム内で共有されることによって、チームとしての形式知になる」ということになるでしょう。

そのような意味において、暗黙知と形式知の変換をする表出化と内面化は、個性化に力点がある意識モードと捉えることができます。

これまでの話をまとめると、SECIモデルの本質は、「抽象・具体、主客未分離・分離(暗黙知・形式知)、個・集合という意識モードの行き来を通じた知の創造」と言えます。

アルー株式会社 コラム
意識モードを自由に行き来する
このように、SECIモデルは、いくつかの意識モードを行き来することによって知の創造をしていると捉えることができます。

それでは、いくつかの意識モードを行き来するために必要なことは何でしょうか?

もっとも大切なことは、今現在の自分(たち)の意識モードに自覚的になるということではないかと思います。意識の意識化ですね!

今現在の自分(たち)の意識が対象としている内容だけではなく、その意識モードをメタ的に意識をして、「今はこの意識モードがメインになっているから、ちょっと違う意識モードを試してみよう」とか「今はこの意識モードでうまくいっているから、しばらくこの意識モードを継続しよう」ということが意識できれば、意識モードを使い分けることができていると言えます。

その一丁目一番地は、自分(たち)の意識モードの意識化ですね。

今回の記事では、価値創造プロセスの最後のプロセスである「戦略の創発」について、意識の意識化の観点から掘り下げてお話ししました。少し難しいと感じる部分もあったかもしれませんが、意識の意識化の観点からSECIモデルを捉えることができると、とてもシンプルに「意識モードの意識化と使い分け」というイメージで捉えることができ、実践しやすくなるのではないかと思います。

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2022.01.04