COLUMN コラム

戦略ストーリーをつくるストーリーとは何か?

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2021.10.08

前回の記事では、いい戦略をつくる出発点は、主体的真理とのつながりから湧き出る内なるエネルギーであることをお話ししました。

ここからの記事では、戦略ストーリーをどのようにつくりあげていけばいいのかについて、戦略ストーリーをつくるストーリー(メタストーリー)と呼べるものをテーマとしたいと思います。このメタストーリーの出発点が、主体的真理とのつながりであることは前回の記事でお伝えしました。

今回の記事では、主体的真理から始まる戦略ストーリーを生み出すステップの全体像についてお話しします。

戦略づくりの前提となる世界観
この内容は、合計1000時間にわたる意識の意識化の探求プロジェクトにおいて、コンサルタントの平野貴大さんが発案して、プロジェクトメンバー3人で共創していったものであり、発案者の平野さんのお名前をお借りして「平野モデル」と私が呼んでいるものです。

「平野モデル」は、楠木建さんの「ストーリーとしての競争戦略」と同じくらい秀逸なモデルであると私は思っています。楠木建さんの戦略ストーリーはマクロ的な視点での戦略づくりを記述するものとして秀逸であり、平野貴大さんの「平野モデル」はミクロ的な視点の戦略づくりを記述するものとして、唯一無二のものではないでしょうか。

驚き

まずは前提となる世界観をご説明して、その世界観の中で「平野モデル」のご紹介をしたいと思います。

戦略づくりの世界観として、3つの次元を想定します。一つは価値の次元であり、私たちが通常、戦略を語るときに想定している次元です。この次元においては、価値が生み出されて価値が顧客に届けられる流れが記述されます。

もう一つは、エコシステムの次元です。エコシステムとは何かについては、今後の記事にて詳しくご説明しますが、現時点においては「ヒト全般」と考えて頂ければと思います。

以前の記事で、戦略の誤解の一つとして、「戦略は、事業(コト)のみを記述する」ということについてお話ししましたが、戦略とは、事業(コト)のみの記述だけではなく、一人ひとりのエネルギーや主体的真理を出発点とした人や組織(ヒト)の記述が必要であり、コトとヒトが表裏一体のものとして記述されたものである必要があります。

そのヒトに関する記述をする次元として、このエコシステムの次元があるとお考えください。

また、もう一つの次元は、意識の次元です。これは、主体的真理や、世の中の意識の流れなど、まだ価値として具現化されていない、ヒトの意識を記述する次元です。意識は現象の根源です。ヒトの意識がヒトの言動に影響を与え、ヒトの言動がコトを生み出します。その意味では、意識の次元がもっとも根源的な次元であると言えます。

なぜ、このような3つの次元を想定しなければいけないのか、という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

これからご紹介する平野モデルに腹落ちしていただければ、3つの次元を想定する理由を立体的にご理解いただけると思いますが、ここではヒト(エコシステム次元)とコト(価値の次元)が表裏一体であることを表現するためであることと、いい戦略づくりの始まりは主体的真理(意識の次元)であることを3つの次元を想定する理由として挙げておきます。

戦略ストーリーの進化ステップ(平野モデル)
3つの次元を想定する世界観を前提として、いよいよ戦略ストーリーの進化ステップを表す「平野モデル」をご紹介します。

この図の①から⑤で表されるステップが、戦略ストーリーを進化させていくステップを示す「平野モデル」です。

「平野モデル」の①~⑤のステップを大まかに説明します。(詳細は今後の記事で解説します)

①主体的真理(ありたい姿)とのつながり
何かを「心から成し遂げたい」という想いから、純度の高いエネルギーを発露させる

②エコシステムの出現・発展
純度の高い意識・エネルギーに共鳴するエコシステム(≒ 人同士のつながり)が出現し、発展していく

③仲間の出現・強化
純度の高い意識・エネルギーを具現化する仲間・チームが出現する(強化される)

④顧客の出現・増加
純度の高い意識・エネルギーに共感して、価値を感じる顧客が出現する(増加する)

⑤価値の創造
純度の高い意識・エネルギーを仲間・顧客と協働する中で、価値が具現化する。この連鎖が「戦略ストーリー」となる

このモデルの詳細については、これからの記事において詳説したいと思いますが、ここでは以下の点について、平野モデルの特徴を掴んでいただければと思います。

▼「①主体的真理(ありたい姿)とのつながり」が始まりとなっている(客観的な市場分析から始まるわけではない)

▼①〜⑤のステップによって、3つの次元(意識の次元、価値の次元、エコシステムの次元)を行き来するサイクルになっている

▼1つのサイクルで戦略ストーリーが完成するというものではなく、このサイクルを何回も繰り返して、戦略ストーリーが進化していくものである

▼エコシステムの次元と価値の次元が表裏一体のものとして描かれており、ヒトとコトの一体性、相互作用性が表現されている(コトが重視する、現在の経営観からの脱却)

▼戦略ストーリーを作り出すストーリーを記述しており、コトとしての戦略ストーリーの作り方に比べて、ミクロ的、原因的、微分的なプロセスを記述している

一番大切なことは、主体的真理とのつながり
繰り返しになりますが、客観的な事実や分析は戦略ストーリーを生み出す「スタート地点」にはなり得ないとお伝えしました。「平野モデル」では、戦略づくりのスタート地点は「①主体的真理(ありたい姿)とのつながり」となっています。

これは何度強調しても強調しすぎることはありません。当社は、次世代リーダー育成として、選抜型のトレーニングを手がけることがありますが、その時に一番強調させていただくのは、この主体的真理とのつながりです。

主体的真理とのつながりに目を向けることなく、市場分析と、市場の機会のみに着目してビジネスモデル構築をしていくようなアプローチは机上の議論としては綺麗にまとめることができますが、具現化するエネルギーを全く持ち合わせていない代物になってしまいます。

「平野モデル」の最も重要な特徴は、「主体的真理とのつながり」から始まること
です。


この記事においては、戦略ストーリーを生み出すステップの全体像として「平野モデル」についてご紹介しました。そして、その一番重要な特徴は、主体的真理とのつながりから始まることであることをお伝えしました。次回以降の記事においては、「平野モデル」の「主体的真理とのつながり」以降のステップについてご説明します。

落合文四郎blog
2021.10.08