COLUMN コラム

戦略ストーリーづくりの「始まり」は何か?

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2021.09.30

前回の記事では、「いい戦略とはなにか?」についてお話しました。いい戦略はストーリーであるということ、その中でも経営における競争戦略は、違いを作ってつなげていくストーリーであることを述べました。

一方で、これだけでは、まだマクロ的・結果的・積分的であり、戦略を作れるようになるためには、よりミクロ的・原因的・微分的な体内感覚を明らかにする必要があります。「戦略ストーリーをどのように生み出していけばいいのか」についてまだ答えられていないからです。

今回の記事では、戦略ストーリーづくりの出発点について取り上げたいと思います。

いい戦略は、個人の主体的真理から始まる
結論からお伝えすれば、戦略ストーリーづくりの始まりは、個人の主体的真理です。主体的真理とは、「自分にとって生きがいとなる理想、自分固有の生きる目的」という意味で、私が最も大切にしているキーワードの一つです。

ポイントは「自分にとって」という部分で、誰にとっても正しい客観的真理とは異なります。自分にとって「こうありたい」「こうあるべき」「こういう世界をみたい」という強い願いであり、自分のうちから溢れ出てくるようなエネルギーを伴います。より詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください。

過去記事:「主体的真理とは何か?」

「いい戦略」の起点には、必ず個人の強い意志が必要です。これは大変あたりまえのことに聞こえるかもしれません。ですが、今日においては「机上で戦略を考える」、つまり客観的な事実や分析から戦略づくりをスタートする場面が非常に多いのではないでしょうか。

客観的な事実や分析が必要ないと言っているわけではありません。戦略ストーリーを創発していく中で、それらが有効になる場面もあります。

私がお伝えしたいのは、客観的な事実や分析は戦略ストーリーを生み出す「スタート地点」にはなり得ないということです。「いい戦略」のスタート地点は、「こうしたい」「こうあるべき」といった、個人の中にある理想/強い想いであるはずです。

私自身の例でいえば、起業に至ったストーリーの出発点は、やはり自分の主体的真理にありました。その当時は、現在ほどには言語化されておらず、「人がイキイキと生きていける世の中になるといいな」という漠然としたテーマでしたが、その内側にあるエネルギーは活火山のマグマのようなものでした。

明確に言語化されているかどうかが大切という話ではなく、内なるエネルギーが湧き出してくるような感覚があるかどいうかが大切です。そして、この内なるエネルギーはその人の主体的真理と必ず繋がっています。いい戦略は、この主体的真理とのつながりからくる内なるエネルギーなしには、実現しえません。

戦略ストーリーづくりの出発点は、個人の主体的真理とのつながりから湧き出る内なるエネルギーです。

内なるエネルギーを発揮する
主体的真理とつながることができると、心の底からエネルギーが湧いてきます。その物事のためなら寝食を忘れてエネルギーを使えるような状態に近くなります。これは、直感・思考・感情・五感が一致(不整合がない状態)し、内なるエネルギーが湧いている状態です。

主体的真理は誰にでもあります。それでは、主体的真理から湧き出る内なるエネルギーがでてくる場合と、そうではない場合は何が違うのか?という疑問が湧く人もいるでしょう。

その違いは、主体的真理そのものにあるのではなく、主体的真理から湧き出てくるエネルギーが自然にでてくるような直感・思考・感情・五感の一致があるか、それらが不一致であることによりエネルギーがどこかで遮られてしまうかにあります。

もう少し具体的に言えば、主体的真理とのつながりを感じる直感とは相反するものとして、「自分のありたい姿を追い求めるのではなく、XXをしなければいけない」というような「思考」があったり、それに付随する恐れや不安という「感情」があったりすることによって、主体的真理から湧き出るエネルギーは遮られてしまうことがあります。

このような思考や感情が働いてしまうこと自体がいけないことではありませんが、そのような思考や感情があることによって、主体的真理とのつながりが失われてしまうと勿体無いことであると言えます。

いい戦略をつくる出発点は、このような思考や感情があったとしても、主体的真理とのつながりを大切にして、自分の内なるエネルギーを感じることから始まります。

主体的真理とのつながりから湧き出る内なるエネルギーが出発点
これは想像になりますが、スターバックス創業者のハワード・シュルツ氏は「ゆったりとくつろげる場所をつくりたい」という、個人的、かつ心からの願いを持っていて、その願いに純粋であったからこそ、スターバックスの戦略を創発できたのではないでしょうか。もしそうだとすれば、この想いこそが、主体的真理であり、内なるエネルギーです。

当時のコーヒー市場の分析や競合調査を ”起点” として、スターバックスを発想・実現することは、不可能だったと思います。(もちろん、成長の過程でこういった調査が役に立つ局面はあります)。

また、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は、このように語っています。

「私たちは地球で最もお客様を大切にする企業であり続けます。これが簡単な挑戦ではないことは理解しています。私たちはもっと改善できることが沢山あることを知っています。しかし私たちは先に待ち受けている沢山の挑戦や機会に大きな力を見出しています」(同社HPより)

ここには、ジェフ・ベゾス氏の主体的真理からくる思いと、それを実現するときに相反するいろいろな問題があったとしても、それを乗り越えていくという意志とエネルギーを感じます。この思いとエネルギーがいい戦略を生み出した原点と言えるのではないでしょうか。

今回は、いい戦略をつくる出発点が主体的真理とのつながりから湧き出る内なるエネルギーであることをお伝えしました。次回は戦略ストーリー進化のステップの全体像についてお話ししたいと思います。

落合文四郎blog
2021.09.30