COLUMN コラム

リーダーの自己信頼が、チームに心理的安全性をもらたす

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2021.06.10

前回の記事では、自己信頼が、人との「横の関係性」を育み、自分は自分らしく、他者もその人らしくいられるようになるということをお話ししました。

今回の記事では、リーダーの自己信頼がチームに心理的安全性をもたらすということについてお話しします。

心理的安全性とは何か
心理的安全性という概念は、Google社が社内プロジェクトにおいて「効果的なチームの条件とは何か」という問いに対して探求した答えとして、紹介されたことで日本においても知られるようになりました。

Google社のリサーチチームは、この問いに対して、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止め、その中でももっとも根幹をなすものが「心理的安全性」であると結論づけています。(Google社の調査概要はこちら)

ここで心理的安全性の定義を確認しておきましょう。

心理的安全性の定義(Amy Edmondsonの定義):
このチーム内では対人関係においてリスクをとったとしても安心できる、という共有された信念

この定義を読んで、「心理的安全性」という言葉の第一印象と少し違うなと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。心理的安全性という言葉を聞くと、「そのチームに所属していると、いつも安心・安全を感じられる」というイメージを持たれるのではないでしょうか。チームに所属している人同士の仲が良く、平和な感じであり、争いごとが起きない印象ですね。

しかし、上記の定義においては「対人関係においてリスクをとったとしても安心できる」と記述されています。「いつも安心・安全を感じられる」というイメージであることに間違いはありませんが、「お互いに遠慮して、一線を踏み越えることはしないために、和が成り立っている」というものではなく、「一線を踏み越えたとしても、お互いに安心感を持ち続けることができる」ということを心理的安全性と呼んでいます。

いま、みなさんの職場において、「もっとこうしたら良くなる」と感じることはありますか?少なくとも、1つや2つ、職場における課題や改善点などは思い浮かぶのではないでしょうか。

「対人関係においてリスクをとる」というのは、このような場合に、「職場の課題や改善点を言い出すと、職場の雰囲気が少し気まずくなってしまうかもしれないけど、この職場の人たちであればわかってくれると思うので、勇気をもって伝えてみよう」と思えることを指します。

逆に、「職場の課題や改善点を言い出すのは、誰かの気分を害する可能性があるからやめておこう」とか「職場の和を乱す人とみなされると嫌なのでやめておこう」と思う場合は、「対人関係においてリスクをとりにくい」状態であると言えます。

さて、この心理的安全性はなぜ重要なのでしょうか?

心理的安全性を提唱したハーバード大学のエドモンドソン教授は、心理的安全性は組織の学習姿勢を高め、それがチーム成果に結びつくという研究結果を1999年に発表しました。

すなわち、心理的安全性があることで、チームとして成長できるということです。心理的安全性があることによって、多角的に物事を捉えて話し合うことができたり、チームの問題を率直に話して改善することができたり、既成概念にとらわれずに新しい発想を取り入れることができたりすることで、チームとしてのパフォーマンスが高まるということは容易に想像できます。

逆に、問題だと思っていてもチーム内で言い出すことができなかったり、役職者の意見が絶対であり他のメンバーが口を挟む余地がなかったりすると、チーム学習が進まずに、チームとしての成果が出にくくなるということを実際に経験された方も少なくないでしょう。

私自身も、チームに心理的安全性をもらたすことができているかと問われれば、まだまだできていないというのが実情です。心理的安全性のあるチームを作りたいと思っていても、場面によって自分のエゴがでてしまったり、社長という役職からくる背負い感が裏目にでてしまったり、和を乱すような発言をするメンバーに懐疑的な思いを抱いてしまったり、まだまだ具現化できていません。

このように、心理的安全性は、効果的なチームを生み出すために重要なことということは理解できても、それを具現化することは一筋縄ではいきません。心理的安全性のあるチームを作りたいと思うことは大切ですが、思ったからといって、それがすぐに実現するわけではありません。

それでは、心理的安全性は何によってもたらされるのでしょうか?

自己信頼が心理的安全性をもたらす
ここから書く内容は、オーソライズされた研究結果ではなく、意識の意識化の探求プロジェクトの中で生み出された仮説になります。ただ、個人的にはかなり納得感が高く、日々の実践を通じてその確信度合いは高まっています。

我々の探求プロジェクトにおける答え(仮説)は「自己信頼が心理的安全性をもたらす」というものでした。

私たちが考える「心理的安全性が生み出される機序」は次のようなものです。

以前の記事で、自己信頼は他者信頼を生み出すということについてお話ししました。自分を無条件に信じることが、他者を無条件に信じることにつながります。逆に言えば、自分の条件付きでしか信じられないと、他者も条件付きでしか信じることができません。

自己信頼があると、自己開示をすることができます。自分を無条件に信じることができれば、自己開示に躊躇する必要がなくなります。自分の弱みであったり、課題であったり、誤りであったり、通常では言いにくいとされることであっても、自分に対する無条件の信頼があれば、このようなことを自己開示することの抵抗感は少なくなります。

また、他者信頼があると、他者受容をすることができます。他者を無条件に信じることができれば、他者のあり方や振る舞いや言動を、良い悪いという判断を保留して、受容することができます。

また、自己開示と他者受容は、相互に影響を及ぼします。自己開示が進むほど、他者のことも受容しやすくなるというのは、仲がいい友達、気のおけない仲間などを思い浮かべていただけると容易に想像できるではないでしょうか。

そして、自己開示と他者受容が進むと、相互受容・相互理解が進み、その関係性に心理的安全性が生まれてきます。

リーダーの自己信頼が大切
心理的安全性は、チームで共有された信念ですから、それを生み出す元となるのはチームメンバーの一人ひとりです。その意味においては、各チームメンバーの自己信頼がチームの心理的安全性に寄与します。

その中でも、リーダーとしての役割を担う人の自己信頼が大切であると私は考えます。リーダーのあり方や振る舞いがチーム全体に与える影響は大きいからです。

ですから、みなさんがリーダー的な役割でチームを率いている場面があれば、「自分の自己信頼が、チーム全体の心理的安全性をもたらす」ということを意識すると良いと思います。

リーダーではなく一人のメンバーとしてチームに参画している場面においては「(リーダーの自己信頼だけではなく)自分の自己信頼も、チーム全体の心理的安全性をもたらす」と捉えることをお勧めします。

「あれ?リーダーの自己信頼が大切なのだから、チームメンバーとして参加している場合は、自分はあまり関係ないのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。おっしゃる通り、リーダーとしての自己信頼の影響度合いの方が高いですが、先ほど述べたように各メンバーの自己信頼も影響を与えます。

ですから、自分によって変えることができることに意識を向けるという意味において、自分を主語にして「自分の自己信頼も、チーム全体の心理的安全性をもたらす」と捉えることをお勧めしています。

「自分はあまり影響を与えないから関係ない」というスタンスではなく「自分もチームに影響を与えうる一員である」というスタンスや、「仮に自分がリーダーの役割だったら、どのように振る舞うか」を考えるというスタンスで日頃から取り組んでいる人が、周囲から陰に陽に推薦されてリーダー的役割をそのうち担うようになるという事例をみなさんも見たことがあるのではないでしょうか。

なぜ、心理的安全性を生み出そう、だけでは不十分なのか
ここで「なぜ、わざわざ自己信頼という概念を持ち出して、心理的安全性との関係を説明する必要があるの?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。おっしゃる通り、心理的安全性があれば効果的なチームになるのであれば、心理的安全性を生み出すことだけを考えればいいというのも一理あります。

それでも、「自己信頼が心理的安全性を生み出す」ということを意識しておく重要性があると私は考えます。それは、自己信頼が原因であり、心理的安全性が結果であると考えるからです。

先ほど、私自身の話として、「心理的安全性のあるチームを作りたいと思っていても、まだまだ具現化できていない」ということをお伝えしました。その状況においてしみじみと感じることは、原因となる部分(自己信頼)が変わらなければ、結果としての状態(心理的安全性)も簡単には変わらないということです。

私自身の場合は、元々、自己信頼が弱い人間でした。それを少しずつ克服しつつあるように思っていますが、また途上です。自分の自己信頼の程度に応じて、チームの心理的安全性の度合いは増しているとは思うものの、やはりまだ十分な水準とは言えません。それは、自分の自己信頼がまだ十分に醸成されていないからだと考えています。

とはいっても、悲観的に考える必要は全くないと思っています。これまでの記事でお伝えしたように、自己信頼は醸成することができるものだからです。自己信頼は、自己一致(メタ意識から、直感、思考、身体意識をありのままに捉えること)の積み重ねによって培われていきます。

過去記事:自分への信頼は、どのように生み出せるか?

自己一致
(メタ意識から、直感、思考、身体意識をありのままに捉えること)

自己信頼
(自分を無条件に信じること)

チームの心理的安全性

チームの学習促進

チームの成果

ここまでお話ししてきたことをまとめると上図のようになります。自己一致の積み重ねが、心理的安全性を生み出し、チームの成果をもたらします。そして、重要なことは、自己一致は、いつでもどこでも、自分がやろうと思えばできるということです。

私自身、自己信頼が心理的安全性をもたらすということに気づいてから、チームでの協働や、周囲との関係性構築がとても楽になりました。そのような協働や関係性構築がうまくいくこともあれば、うまくいかないことも現実にはありますが、どんな状況であっても、「自己信頼がベースになっている」ことや「自己一致の積み重ねで、状況は改善していくことできる」と信じられることで、自分が集中して取り組むべきこと、意識するべきことが明確になったからです。

今回は、自己信頼が心理的安全性を生み出すという話をいたしました。職場で会議の場面、部下との1on1を行う場面、家族との会話の場面など、1日の中で協働する場面やコミュニケーションをとる場面はたくさんあると思います。そのような場面で、「自己信頼が心理的安全性を生み出す」ということを意識しながらその場に臨んでみると、これまでとは少し違う感覚を得ることができるかもしれません。

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2021.06.10