COLUMN コラム

リーダーの器は、どのように広がっていくのか?①

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2021.04.25

これまでの記事においては、リーダーの成長をテーマとして、次のようなことをお伝えしてきました。
今回は、リーダーの成長に必要な「一皮むける経験」において、どのような意識の使い方をするのがいいのかについてお話しします。

適応課題への対応には意識の意識化が必要

まず、最初に確認させていただきたいことは、なぜ意識に注目するのかということです。

現象

現象の構造・背景

行動

決断

思考・感情

メンタルモデル(信念体系)

直感(主体的真理)

自己(自意識の主体)

この図は、目の前におこる現象が起こる原因や背景には何があるかを整理したものです。例えば、行動が起こる原因となるものは決断です。決断をする原因となるものは思考・感情になります。この図において「決断」から「自己」にいたるまで、全て「意識」に関わっていると言えます。意識は、現象の根源なのです。

また、リーダーの成長の鍵は、技術課題ではなく適応課題であるということはこれまでもお伝えしてきました。適応課題とは、既存の思考様式では解決することが難しく、従来の価値観や信念の一部を変更、もしくは手放すことが求められる課題です。したがって、適応課題に取り組むということは、上記の図のメンタルモデル(信念体系)や直感(主体的真理)などを扱っていくことになります。これも、「意識」に注目する理由の1つです。

さて、ここまでの話で意識に注目するのはいいとして、どのような意識の使い方をするといいのでしょうか?

カギとなるのは、意識の自由度を高めることです。より具体的には、以前概要を述べた「3+1意識モデル」の各領域を自在に使えるようになることを指します。

意識の自由度について話をする前に、3+1意識モデルのそれぞれの意識について簡単に補足させてください。

この中でも一番わかりやすいのは、身体意識です。私たちは、五感を通じて外部からの刺激を受け取ります。この刺激を受け取っているのが身体意識です。

そして、受け取った刺激が何かを知覚して、解釈します。例えば、空にアーチ型にかかる7色の光を「虹」として知覚して解釈をします。この知覚をして、解釈をしているのが思考意識です。

直感意識は、「ピンとくる」「インスピレーションが湧く」というときに活性化している意識です。身体で感じたり、言語化できたりするものとは限らないので、少しわかりにくいかもしれませんが、「ピンとくる」「直感が降りてくる」という経験は誰しも持っているのではないでしょうか。

メタ意識は、自分を俯瞰的にみる自分の意識です。映画の俳優としての自分を見守る、映画監督としての自分の視点となります。

このように3+1意識モデルで、自分の意識を意識化することによって、それぞれの意識の特徴や強みを活かすことができたり、特定の意識に偏らずに柔軟に物事に対処できたりするようになります。

それでは、意識の自由度を高めるとはどのようなことなのか、それがどのように精神的成熟につながるのかについて、大きく2つに分けて説明します。

①特定の意識に偏ることなく「ありのままの自分」を捉える
リーダーの成長に必要な内面の葛藤の経験とは、「主体的真理に生きることと、周囲と調和して生きることの矛盾」に向き合う経験であるということをお伝えしました。ですから、まずは主体的真理を捉えることから始めましょう。

「あなたの主体的真理はなんですか?」と聞かれたら、どのように答えますか?

実は、この質問に明確に答えられる人は限られています。また、答えられるからいいとか、答えられないからダメという話ではありません。 主体的真理を認識すること自体、簡単なことではないですし、それを言葉という限られた形式で表現することは、かなり困難なことです。

主体的真理は、3+1意識モデルの直感意識に属します。この意味をもう少しかみ砕くと、頭で考えたメリットデメリットや常識(すなわち思考意識)にとらわれることなく、自分が「本当に大切にしていること」を直感する、というイメージです。

これは直感ですから、言葉ではうまく説明できないことも多いです。よって、他人にはうまく説明できないが、自分の中では深く納得している場合、主体的真理に近づけている可能性が高いと考えられます。「主体的」 真理という言葉の通り、本人の主観で納得する性質のものであり、「客観的」 真理とは対を成す概念なのです。

例えば、これまでの人生を振り返って、私の主体的真理の1つを敢えて言語化すると「本質探求による大いなるものとの一致感」、もう少し具体的に言えば「物事の普遍の法則を見つけ出す」ことでした。学生時代の物理の勉強も、今の教育研修の事業も、同じ主体的真理の上に成り立っています。

そして、なぜこの主体的真理を追求しているのかと聞かれても、言葉や論理でうまく説明することはできません。ただ、そこに自分のエネルギーがあるだけです。これが、主体的真理の性質です。

直感意識にどうアクセスするか?
直感意識によって感じられる主体的真理は、残念ながらじっと考えて見つかるものではありません。じっと考えるという行為自体が思考意識であるため、むしろ直感意識にアクセスしづらくなってしまいます。

現代人は、思考意識に偏りやすい性質があります。思考意識は、言語を扱うことができるため、他者との情報の共有に長けています。ビジネスの世界では特に、説明可能性・共有可能性が重視されますので、思考意識が大切になることは頷けます。

しかしながら、思考意識による言語化や客観的分析は、固定概念を生み出しやすい側面もあります。直感意識にアクセスするためには、固定概念からいかに自由になるかが鍵です。

例えば「自分のやりたいこと」を考えるとき、思考意識を使ったアプローチでは、次のような考え方になります。

・外部環境を分析して、機会とリスクで判断する
・自分にとってのメリット・デメリットで判断する
・評価や年収などの目に見えやすいもので判断する
・他人からどう見えるかで判断する

思考意識そのものは大変有効なものです。しかし偏重しすぎると「社会人とはこうあるべき」「上司とはこうあるべき」などの「XXとはこうあるべき」といった固定概念を生み出し、本当に「自分のやりたいこと」が見えなくなってしまいます。

まず、上記のような思考意識による判断を一旦脇に置いておきましょう。そして、過去の自分の体験を振り返り、心から喜びを感じた瞬間を振り返ってみます。

主体的真理は、何をやってきたかではなく、やってきたことの「何に共鳴したか」に現れます。ただ経歴を言葉で書き出すのではなく、体験を振り返ってみてください。そうすると、私の例で言えば、物理と起業のように頭で考えていてはつながらない物事にも、自分なりのつながりが見えてくるかもしれません。そこに主体的真理、つまり、ほんとうの自分の心の声が隠れています。

合わせて重要なのが、身体意識を使うことです。身体意識を使うとは、快・不快の体感覚(≒感情)を無視しないこと。例えば、頭(=思考意識)ではメリットがあるとわかっていても、気持ちが乗らない場合、その感情を無視せずにそのまま受け止めるということです。

過去の体験を振り返るときも、感情が動いたタイミングに主体的真理が現れる可能性が高いです。身体意識からのメッセージをきちんと受け取ることで、思考意識への過度な偏重を防ぎ、直感意識の主体的真理とつながりやすくなります。

そして、これまで述べてきた直感意識・思考意識・身体意識の3つの働きそのものを意識するのが、メタ意識です。3つの意識を一次元高い場所から俯瞰し、いまどの意識が働いているか(働いていないか)をニュートラルに捉えます。

先ほども書いた通り、メタ意識は映画監督の視点に近いです。3つの意識を働かせている自分は映画に出演する俳優であり、それを映画監督として見守っているイメージです。

思考意識の固定概念に捉われることなく、身体意識の快不快を無視せず、直感意識の主体的真理とつながる。さらに、メタ意識を活用してこの3つの意識の全体を見守る。つまり、特定の意識に偏ることなく「ありのままの自分」を捉えることが、成熟に向けたスタート地点となります。

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2021.04.25