COLUMN コラム

私自身のストーリー② 自ら作り出してしまった「社長の孤独」

落合文四郎
Alue co.jp CEO
2020.11.12

前回の記事では私自身の起業までの経験を元に主体的真理についてお話ししました。今回は私自身のもう一つのストーリーから、主体的真理に生きるために必要なことついてお伝えしたいと思います。

(初回では、「経営における矛盾を両立するパラダイムは何か?」について述べていますので、まだ読んでいないという方は、是非とも初回からお読みください)

ケチケチ創業

「起業するときには失敗するリスクは考えませんでしか?」

起業してからしばらくの間、もっともよく聞かれた質問です。「なんとかなるだろう」それが当時の自分の直感でした。

3人で創業をしたのですが、給与は生活できる最低限レベルにおさえたケチケチ創業。本業である教育の商品開発・サービス開発を進めながらも、前職のつながりからコンサルティングの仕事をもらい、キャッシュを稼いでいました。

また、万が一うまくいかずに創業メンバーで出し合った1,000万円がなくなったとしても、またコンサルティングの会社で働けばいい。(実際に雇ってくれるかどうかは別問題ですが。。)そのように考えると、「なんとかなるだろう」と気楽に構えることができた日々でした。

前職のつながりでコンサルティングの仕事の機会を頂き、その仕事は順調に進んでいくものの、本業の社会人教育についてはなかなか売上が立ちません。会社の四季報をもとに片っ端から電話でアポイントを取ろうとするわけですが、当然ながら門前払い。

前職では繋いでもらうことができた電話も、名もない会社の名もない人の電話は繋いでもらえません。しかし、起業するエネルギーをもった若者は、このくらいではめげません。アポイントのとり方を工夫し始めます。何度も試行錯誤をする中で、担当者の人の名前がわかれば、多くの場合繋いでもらえることがわかりました。そうであれば、コンサルティング会社出身の3人の得意技。あの手この手で担当者の名前を調べ上げていきます。

その後、少しずつではありますが、アポイントを取れるようになっていきました。「習うより慣れろ、100本ノックが当社のコンセプトです」。レクチャー形式の研修スタイルがまだ多かった当時、人事担当の方に、興味をもっていただくことはできました。

しかし、ここに大きな壁が潜んでいます。興味をもつということと、発注という行動をすることのギャップです。法人向け営業においては、複数社の中から1社を選択する「明確な理由」が必要なのです。担当者個人の方の「興味」というレベルでは発注の理由になりません。

逆に「選ばない理由」が明確になると、真っ先に落とされます。当社は、創業から間も無く、実績も乏しいため、人事担当者にとっての「選ばない理由」は明確でした。

最初の受注は、起業してから1年後。創業メンバーと旧知の仲のTさんから発注してもらいました。大手企業の初受注は、最初の訪問から1年が経過したときに、お客様から「100本ノックを活用してやってみたいことがある」という連絡をもらったのがきっかけでした。まさに、縁と運の賜物というような話ではありますが、これらの縁と運がやってきたのは、それまでのアポイントの日々があったからだと思っています。

これらの実績が加わり、社会人教育事業は順調に拡大していくようになります。

社長としての責任感が悪循環に

「何とかなるだろう」と気楽に構えていた私も、事業規模が拡大し、従業員が増えると、多くの責任を自分が一手に引き受けているという不安・孤立感に襲われました。

事業の成長には資金が必要です。それをベンチャーキャピタルや銀行から調達をするわけですが、不動産などの担保をもたない当社が銀行から借り入れるためには、借入の際に個人保証をする必要があります。

最初は数千万円ですが、数年のうちにその金額は数億円になります。当時の私としては、「事業拡大に必要だし、保証をつけるのは社長の役割だろう」と思っていましたし、ためらいはありませんでした。

しかし、私の中では無意識のうちに「自分だけが背負っている」感が強くなっていきました。会社がつぶれれば自分に多額の借金が残るという現実も意識します。何か問題が発生したときなど、誰かを責めたりするわけではないのですが、「それなら自分がやるよ」という独りよがりモードに入ってしまうのです。周囲から孤立してしまうことも増えました。

例えば、期末に会社の売上が少し足りないとき、みんなでアクションを考える前に、「よし、俺が売ってくるわ」と言ってしまうのです。結果として目標を達成できても、周囲との一体感は薄れていきました。会社のメンバーも「社長、また始まったよ」という目で見ていたと思います。

このモードから抜け出せない期間はかなり長く、組織運営がうまくいっていないとの自覚がありました。

そんな私が少しずつ変わることができたのは、周囲の助けのおかげです。

状況を見かねたマネジメントメンバーは、互いに話す機会を多く設けてくれました。あるときには、クリスマスプレゼントとしてコーチングセッションをプレゼントしてもらい、自分の視野の狭さ・悪いモードに客観的に気付くこともできました。(コーチングセッションのプレゼントは結局3年続きました。)

長い時間を掛けながら、少しずつ自分も変わることができ、今日に至っています。

鍵は、意識を自由にすること

このエピソードでお伝えしたいのは、リーダー自身の「意識」こそが、会社・事業運営の起点だということです。誤解を恐れずに言えば、会社がうまくいくかはリーダー自身の心持ち次第なのです。

私が独りよがりモードに入ってしまい、うまくいかなくなった最も根本的な要因は、「社長とはこうあるべき」という自分自身の勝手な思い込みです。

社長たるもの、XXであるべき、XXべき・・・。こうした想いから自分の認識が狭くなり、創業時に強く感じていた主体的真理とのつながりが希薄になってしまったのです。

そして、ここで重要なのは、思い込みを客観的に認識できたことが状況の打開につながったことです。

偏った思い込みに支配されると、意識は不自由になり、悪循環のパターンに入り込んでしまいます。なぜかいつも同じパターンで失敗することはありませんか? そのような場合、自分の中の何か偏った認識が原因になっており、それを変えない限りパターンから抜け出せないことが多いのです。

パターンから抜け出すには、自分自身をメタ的に捉えることが鍵です。時間はかかりますが、思い込みに気付き、意識を自由にする第一歩となります。

人と話したり、新しいことを経験したときに、自分のモノの見方が広がる経験のある人も多いのではないでしょうか。これも一種のメタ認知であり、意識を自由にする感覚に近いです。

主体的真理に心を開くためには、自分自身をメタ的に捉えて意識を自由にすることが出発点になるのです。(どのように自分自身をメタ的に捉えることができるのかについては、これからの記事でお話ししていきます)

落合文四郎blog
2020.11.12