CASE STUDY
事例


事例紹介:社名変更を機に人財育成も問い直す
学ぶ意欲を喚起し、自律的に学ぶ文化を醸成
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会社名
株式会社オカムラ様
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従業員数
3,868名(2020年7月1日現在)
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事業内容
スチール家具全般の製造・販売
産業機械その他の製造・販売 など
2018年4月の社名変更を機に、「豊かな発想と確かな品質で、人が集う環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとし、企業価値のさらなる向上に努めているオカムラ。
働く環境を提案する企業として、社員一人ひとりが「Work in Life(ワークインライフ)」をデザインし、自身が思い描くLifeの実現と社会への還元を目指す独自の働き方改革「WiL-BE(ウィル・ビー)」を展開するなど、様々な改革を推進しています。
人財育成に関しても、自律した人財を育成するというコンセプトを明確に定義し、自律的に学ぶ文化を醸成するべく改革を進めています。
どのように改革を進めていったのでしょうか。また、自律的に学ぶ文化醸成の鍵は何でしょうか。オカムラの人財開発部 坂本憲一氏に、アルーエグゼクティブコンサルタント中村俊介が聞きました。
対談
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株式会社オカムラ
人財開発部
坂本 憲一氏 -
アルー株式会社
エグゼクティブコンサルタント
中村 俊介
※記載部署や掲載写真は2020年取材当時のものであり、その後変更されている場合もあります。
社名変更を機に人財育成も問い直す
坂本憲一氏(以下、敬称略 坂本) : 当社は2018年4月に、創業以来の社名である岡村製作所から「オカムラ」に変更しました。社会や市場のニーズの変化を先取りした製品・サービスの開発や新たな事業モデルの構築を促進・実現するとともに、オペレーションの仕組みをこれからの変化に対応しうるものとするため、構造変革を進めているところです。
中村俊介(以下中村) : 社名変更を機に、人財育成についてもその意義から問い直したとお伺いしました。
坂本 : はい。目指したのは「自律的な学び」の実現です。個人が自律的かつ日常の仕事のなかで学ぶことを通じて、学びの効果を最大化したいと考えています。そのためには、社員一人ひとりの意欲の方向性を探索する必要がありました。そこで、アルーさんにも協力いただいて、人財育成の全体像から見直しました。
中村 : 研修制度などの変更にとどまらず、環境や文化醸成まで含む大きなプロジェクトとなりましたね。
坂本 : そうですね。まずは、広く学ぶ機会を提供するところから始めました。私は2019年に人財開発部に異動してきたのですが、それまでは施策内容との整合性や予算との兼ね合いで、昇格時研修も選抜者だけを対象としていました。モチベーションが最も上がるタイミングの一つが昇格時です。そのタイミングで、全員集めて必要なスキルやマインドの習得をするのが効果的ですが、そうなっていなかったのです。
中村 : 育成のコンセプトを明確に定義したタイミングで、それが実行レベルに反映されているかを丁寧に確認されていったということですね。
坂本 : その通りです。さらに、必須研修で広く学びを提供するだけではなく、それが経営に資するということも証明したかったので、アルーさんにも協力していただき、研修の有効性を明らかにするトライアルを始めました。
中村 : どんな取り組みか、詳しく教えていただけますか。
坂本 : まず取り組んだのが、研修面談です。以前から、研修に対する評価が確立されていないことに課題を感じていました。研修面談では、研修前と直後に上司と面談し、研修の成果を検証していきます。研修の成果は直属の上司が最もよくわかるはずなので、研修を経てどう変わったかを評価してもらうのです。また、受講者目線でもサーベイを行い、成果を可視化しています。来期以降は、一ヶ月後、三ヶ月後、半年後にも面談を実施して、受講者アンケートの自己評価と、上司からの客観評価を融合したいと考えています。受講者目線と上司の評価を組み合わせて科学的なサーベイとして調査・分析することで、研修の有効性や満足度の向上要因を明らかにし、ブラッシュアップしたいと考えています。
中村 : 個人やチーム、さらには組織としてのパフォーマンスやクリエイティビティを高める要因については、これまで多くの企業が頭を抱えてきました。人財育成の全体像を見直しただけではなく、効果を可視化し、要因を分析し、会社全体の成長戦略につなげようとしているところがすばらしいですね。
坂本 : ありがとうございます。我々の仕事の重要なことの一つは経営にインパクトを与えることだと捉えていますので、それを明らかにする準備を進めているところです。
ブレンディッド・ラーニングで学びの日常化を目指す
中村 : 育成体系や実施形態についても詳しくお聞かせください。貴社は、集合研修とeラーニングを組み合わせ、双方のメリットを生かして研修や学習を行う「ブレンディッド・ラーニング」を積極的に取り入れていますね。
坂本 : ブレンディッド・ラーニング導入の背景には、学習環境の変化があります。リモートワークが急速に普及し、仕事の仕方だけでなく学び方も変化するなかで、集合とオンライン、自主学習を組み合わせて効果的な学習を促すブレンディッド・ラーニングは、今後ますます重要になるでしょう。先ほどお話した必須研修についても、これまで選抜者のみ集めていたところから全員に対象を広げると、同じやり方では予算が何倍にもなります。集合させる意味を整理し、インプットパートはできる限りに移行することで、予算コントロールを実現できたというメリットもありました。
中村 : 貴社の場合、ただの組み合わせではなく、ブレンディッド・ラーニングで何を実現するかまでしっかり考えられているのが特筆すべき点です。
坂本 : 実際のところ、ブレンディッド・ラーニングは非常に複雑で多様なものです。学びの効果を最大化するために、意図的・計画的な全体設計をしていくことが求められていると感じています。とはいえ、自律的な学びというのは本当に難しいものです。
中村 : 一般的に日本では、学びは会社から与えられるものという意識が強いですからね。
坂本 : そうですね。学びの習慣がない人たちが自律的に学んでいくためには、個人の姿勢の変化は当然ですが、会社主導の学びもまだまだ重要だと考えています。レベル感でいえば3段階くらいあります。最終的に目指すのはレベル3の自律的な学び、学びの日常化ですが、そこに到達するハードルは高いと思っています。そこで、レベル1、2の会社主導の学びのステップを経て、着実に移行させる計画をしています。
etudesをプラットフォームとして自律的な学びあいを促進
中村 : 貴社の場合、レベル1、2の会社主導の学びについても、ただ提供するだけではなく、学習目的やゴールをもとに、しっかりと学習体験をデザインしておられます。
坂本 : そこは非常に意識しており、研修ありきの学習システムは、ステップを踏んでなくしていきたいと思っています。本来は、役割や立場などから何を学ぶべきか自律的に目標を立て、日常的に自ら学んでいる状態が理想です。そこを見据えて、集合研修やe-Learningなども含めて学び全体を設計し、学習意欲を喚起するとともに、そこで高まった意欲の行きつく場を作りたいと考え、アルーさんのetudesを導入することにしたのです。
中村 : いわゆるLMSは世の中にもたくさんありますが、etudesに決めていただいた理由はどんなところだったのでしょうか。
坂本 : まず、全社的な施策を実行するためには、操作が簡単で柔軟なシステムが必要だったということがあります。また、すでに出来上がったシステムではなく、進化し続けているシステムが望ましく、意欲的に挑戦する姿勢を持った企業と組みたいという思いもありました。ミーティングを重ねるなかで、柔軟でチャレンジ精神が強いアルーさんなら我々の目標に寄り添った開発をしてくれると思い、etudesに決めました。
中村 : 選んでいただき光栄です。etudesをプラットフォームとして、学びあいの場を実現しておられますね。
坂本 : そのひとつが「オカムラ ユニバーシティ」や「オカゼミ」です。オカムラ ユニバーシティは、自分のキャリアや未来の設計図を描くための新しい学びの場としての企業内大学です。そのなかに位置づけられるオカゼミは、いわば社内勉強会です。他の事業部の考え方を学びたいと思った時に、自分で探して学べるようになることを目指しています。
中村 : 人財開発部は、どのような関わり方をしているのでしょうか。
坂本 : 現在は、人財開発部がetudesに全国の勉強会情報を掲載し、それを参考に自部門で勉強会を行ってもらうフェーズです。徐々に現場主導に移行したいと考えており、来期は勉強会情報を、自分たちでetudesにアップしてもらう予定です。このようにして一定量コンテンツが集まれば、etudesに行けば欲しい情報や人にアクセスできるようになり、プラットフォームとしても活性化されていくでしょう。最終的には、勉強会情報を告知して、リアルタイムでetudesに集まって勉強会ができればいいなと考えています。
中村 : すでにetudesには多くのコンテンツが掲載されていますね。学びあう文化の醸成やプラットフォームの活性化は多くの企業がやりたいと思っていることですが、何か工夫はされたのでしょうか。
坂本 : 勉強会自体は、創業当時から大事にしており、社内に根付いているというのはありますね。ただ、業務が忙しくなるにつれ、形骸化している部分も正直ありました。忙しい業務の合間に、勉強会の発表資料を作る負担感は相当なものですし、やらされ感のある発表を聞くのも面白くありません。これでは、みんな不幸です。今、etudesに年間の勉強会情報を集約するのと同時に、勉強会の在り方もディスカッションしているところです。もっとワクワクする勉強会になればいいなと思っています。
中村 : なるほど。創業当時から大事にしていた土台があったのですね。とはいえ、それが仕組みとして定着することで魂が伴わなくなるということは、どの企業でも起こりがちです。
貴社の取り組みは、魂を入れ直すものといえるかもしれません。勉強会のような文化は、どの企業でも何かしらあるものです。いたずらに新しい施策を始めるのではなく、今あるもの、形骸化しているものに魂を入れ直すというのは重要な着目点だと思います。
坂本 : これまでアクティブに勉強会を行ってきた部門ともディスカッションし、成功体験を共有したいと考えています。
人財開発部門の役割は管理から価値創造へ
中村 : 学び全体をつなげるという意味でのブレンディッド・ラーニング、研修ドリブンじゃない学びあいの場としてのetudes。一つひとつは当たり前かもしれませんが、全部やりきっている企業は非常に少ないのが現状です。坂本さんは人財開発部に来てあまり期間がありませんが、このような改革を進めるのにご苦労もあったのではないでしょうか。
坂本 : 当然ながら反発はありました。それでも強い信念を持ち実行しました。実は私、人に教える部門というのは組織にあまり必要ないと思っているんですよ。人が教えるよりも、自分たちで学び、考えて行動するほうが効果的なはずです。当社も、人財開発部が手取り足取り教えるのではなく、学びあう組織になるのが理想です。
中村 : 人財開発部門の役割のうち、いわゆる「知識の転移」の占める割合は小さくなっていくということですね。私もその点については共感します。ただ、それで人財育成部門の役割は小さくなっていくかというとそんなことはなくて、学ぶ風土づくりというところに果たす役割はむしろ大きくなるような気がしています。有機栽培の畑の土と同じで、人間が手をかけて、意識を向ける事がよりよい風土づくりには必要です。人財開発部門も、すべてお世話するという役割は今後どんどん薄れ、より俯瞰した見立てをしながら組織開発をしていくことが求められていくのではと思います。
坂本 : まさにそういう意味で、人財開発部門の役割は変わっていくと捉えています。自律的に個人が学びあうことで、我々のような存在の認識は薄れていくけれど、担う役割はより重要になっていくといえるかもしれませんね。
中村 : さて、ここまで強力に改革を推し進めてこられた坂本さんですが、今後やってみたいことはありますか。
坂本 : 我々は人財の育成を担う役割ではありますが、その域を超えてオカムラ全体のビジネスモデルに対してイノベーションを起こしたいと考えています。これはetudesを活用していて感じたことでもあります。etudesをプラットフォームとして、これまで関わりのなかった部門の知識やノウハウを、いつでもどこでも確認できる態勢が今、できつつあります。今後は、知と知の融合を実現し、全社的にイノベーションを起こすツールとしてetudesを活用していきたいですね。
中村 : まさに、人材版伊藤レポート(※1)でも提言されていた「人事部門は管理部門から価値創造部門へ」の体現ですね。当社も引き続き、あらゆる面でサポートさせていただければと思います。本日はありがとうございました。