人材・組織に関わるコラム column

2012年2月
アジア各国の将来を担う「次世代ビジネスリーダー」の育成

アルー株式会社 グローバル商品開発部 エキスパートマネージャー 山口 幸治

京都大学大学院人間・環境学研究科修了(応用生理学専攻)、読売新聞大阪本社入社。島根県松江支局にて、県警記者クラブに所属、県内の事件・事故の取材を担当。その後、兼松株式会社に入社。米国産・カナダ産の食品の輸入通関業務・営業・品質管理などを担当、北米地域有数のグローバル企業との交渉に従事。2011年アルー株式会社に入社、中国・インド・シンガポールなど海外事業全般を担当。

2008年9月のリーマンショック後、経済成長が鈍化する欧米諸国を尻目に、アジア新興国は依然として急速な発展を続けている。多くの日本企業がビジネス拡大に向けてこの地域に注目しており、弊社も上海、インド、シンガポールに拠点を設立し、お客様のグローバル人材育成のサポートに取り組んでいる。

グローバル化の壁は単に「語学力」なのか

アジア新興各国で成果を出せる人材への需要が高まる一方、弊社において日本企業の中堅社員向けに実施した意識調査(「グローバル化に対する中堅社員の危機感 30-39歳中堅社員意識調査」)で興味深い示唆が見られる。「外国人と仕事をすることへの不安」に関する質問に対して、約7割が「不安を感じる」と回答しており、その不安の理由に「語学力」を挙げる方が多く存在した。このキーワードは、昔と変わらず現在も日本企業、日本人のグローバル化に最初に立ちはだかる大きな壁である。

それでは日本で語学学校に通い、あらゆる企業が導入しているTOEICのスコアを改善すれば、不安を解消し、新興国においてビジネスの結果を出すことができるのだろうか? 答えはNOである。実際に、TOEICのスコアが900点を超えるにもかかわらず、海外とのコミュニケーションで苦労し、結果を残せない人がいる一方で、その逆も存在する。これまでもそのようなケースを多く目にしてきた。では、ちまたで言う語学力以外にどのような要素が必要となるのであろうか。同調査の回答では、同時に「不安を感じる」理由に、「文化・価値観の違い」、「意思疎通」も挙げられている。

筆者の前職(商社)での経験を紹介したい。前職ではカナダを担当する期間が長かったが、ご存知のとおりカナダは多民族国家である。したがって、交渉相手は、アングロサクソン系、フランス系、中国系、ユダヤ系と多岐にわたり、それぞれが話す英語に異なる特徴がある上、交渉のアプローチも違う。そうした環境においては多様性を受容し、いかに柔軟に対応していくかが問われる。また、時には正面から大いにぶつかり、自社の主張を通さなければならないときもある。こうした経験は、アジアの新興国各国にビジネスの場を移した現在、大いに生かされていると思われる。ただし、日本において海外のビジネスマンにもまれて成長するという経験ができる機会は限られている。

グローバル他流試合で学ぶこと

こういった課題に応えるための弊社の取り組み事例をご紹介したい。世界有数のビジネス都市シンガポールにおいて、弊社現地法人の主催で「Asia Future Leaders Summit」と銘打った公開講座を開講している。当地のシンガポール国立大学エクステンションを舞台に、日本、中国、インド、シンガポール、台湾、タイの6カ国・地域から優秀なビジネスマンが集結。参加者のプロフィールは経営コンサルタント、マーケティング、営業、海外事業部、人事部と多彩で、ディスカッション中心のプログラムはさながらグローバル他流試合である。

今回の公開講座においては、グローバリゼーションやグローバルリーダーシップに関するレクチャーのほか、アジアのグローバル企業のケーススタディ、市内視察などが盛り込まれ、中でも多様なバックグラウンドの受講者が存在する環境においてのディスカッションは大いに盛り上がった。

海外派遣公開講座 Asia Future Leaders Summit


ここで日本人受講者の声を一部紹介する。

「グローバルビジネスを本気でやるなら外国人上司、部下とのかかわりは不可欠。対応しないと置いていかれる。危機感を持った。」

「日本のセミナーに参加すると、同じような意見による議論になりがちだが、今回はそれぞれ考え方が違い、相互に学びあうことが多かった。」

「リーダーになるという意識と意思が高まった。」

日本人受講者は、一定の海外経験があり、社内ではグローバルビジネスの第一人者である方が多く参加していたが、アジア各国の優秀なビジネスマンとの他流試合に大いに刺激を受け、それぞれの職場に戻られたと認識している。今回の取り組みについては、少なくとも6カ月に1回開催し、韓国、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど参加国も拡大していきたいと考えている。

最後に印象に残ったインドからの受講者の声を紹介したい。

「自分の国ではシンガポール国立大学のような所で学ぶのはめったにないチャンス。この機会を今後の成長になんとしても生かしたい。」

実際に彼の受講態度は非常に積極的で、日本人が経済成長と共に失ってしまったハングリー精神を思い起こさせるものであった。日本人受講者の中に良い意味での危機感、日本を背負って立つ使命感が芽生えたのではないかと思われる。

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