コラム : インドビジネス成功への近道

2014年01月14日

規制緩和による市場拡大

インドビジネス規制緩和による市場拡大

ところで、サービス分野において最大のGDPを占める小売業では、2012年の規制緩和により更に成長のスピードが早まる見通しであるが、実は小売業が取扱う品目の約6割は食品分野であり、同業界の拡大は純粋な比例関係ではなくとも小売業向けの食品市場も一定の成長が見込まれるであろう。そのトレンドを見込んでか、2012年頃からインド進出を決めた日本の食品メーカーが増え始めている。それらの日本企業の業種は、加工食品メーカーであったり、調味料メーカーであったりと業界自体は多様であるものの、過去に海外展開を手がけてきた経験を有する、という共通点を持つ。

ただ、展開スピードや準備体制から推察するに、これらの企業も「確実な勝算と明確な戦略を携えて」というよりは、伝統的に保守的なインド人およびインド社会の消費行動に変化が見られ、更に最近の傾向として見られる「若者中心の高額・大量消費」「新しいものを好む特性」「いまなお増え続けている中産階級」といった状況をチャンスと認識して、現場での市場環境分析やニーズ調査をしながらの事業展開といった面も見られ、必ずしも全ての企業が磐石の体制で参入しているわけではない。

ただ一方で、増加を続ける12億の人口かつ50%以上の若年層(25歳以下)、積極的な外国企業誘致および外国人に対して開放的な国民性、といったインド市場の魅力に、「早かれ遅かれ必然」といった参入への思いも垣間見られるほど、期待感があふれる市場であることには間違いない。

これまでは、自動車産業や電機産業、重工業等を中心に進出企業が多く見られたが、昨今は小売業やサービス業の市場拡大可能性が膨らんできており、中でも雇用創出力の高い小売産業や外食産業については、政府も積極的に外資誘致、受入をすることが予想される。そのためには、事前の環境分析は必須であるものの、何はともあれ一度この国に足を踏み入れて、中産階級中心に沸き立つ消費欲求や都市部中心に立ち並ぶ外資系外食企業の看板を直に見て、日本の外食産業の参入可能性をご考察頂きたい。

現地で多様性を体感

そのためにも、まずはインドに来て、インドおよびインド人の多様性を現地で体感することが近道である。

一般的に、インドは「人口1億人の国が複数集結した国」であり、事業展開するためには地域毎のマーケティングが不可欠であると言われている。例えば、これまで支援した日本企業が現地インド企業と面談した際に、インド企業からよくある質問の1つが「あなたの企業は、どこで、誰に、何を売りたいのか」というセリフである。これは、日本企業がインド企業に対して「私たちの会社はこのような商品/サービスを主としているが、インドで売れると思うか。アドバイスして欲しい」といった質問をしがちであり、それに対して前述の質問をインド企業が日本企業へ逆に投げかけるといった場面が多々見受けられるのである。このように日本企業が「漠然とした質問」になりがちであることは、日本社会においては個人のニーズや感覚が高いレベルで近似性を有していることに起因していると思われる。しかし、インド企業からすると非常に不可解である。インド人にとって「外国人は海外だけでなく、隣の州のインド人も外国人」という宗教的、(食も含めた)文化的な多様性が普通であり、他州のインド人の嗜好だけでなく、現地語も異なり、会話すら成り立たないこともある。だからこそインド人は、異文化を許容し、外国人や外国企業を理解しようとする姿勢もあり、思考の柔軟性へとつながっているのである。食文化も多様であるインドでは、押しつけの食文化は拒絶する一方で、企業側がインド人のニーズを適確にとらえた外食サービスを提供すれば、現地・外国企業問わず受け入れる文化的許容性を有している。

例えば、自動車産業においてスズキが、清涼飲料においてペプシやコカコーラが、家電においてサムソンやLGが、インド企業を退けてトップシェアをとっていることからも、こうした気質が顕著に現れている。

もう1つのアクションは、インド社会で実際に働いてみることである。

先述の通り、人件費そのものは日本よりも大幅に安い。ただ、飲食店の安定的運営やサービス品質維持のためには、効率的な人材育成と安定雇用が必須である。そのためには企業と従業員の相互理解と協働意識の醸成、さらにインド人やインド社会について深く理解することが不可避である。

そのために、最短かつ効率的な方法が「インド人と共に働く」ということである。現地法人を設立してインド人を採用し、実際に共に働いてみるのが最も好ましいが、コストや法的な側面で現実として難しいケースが多いだろう。そのような場合は外部企業でのインターンや擬似環境での研修等でも一定の効果を期待できる。いずれにしても、ビジネスシーンでインド人と共に働くことこそが、インド人の理解に最も効果的と言える。

※文中の為替換算レートは、1 INR = 1.65 JPYを適用

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