コラム : 6億人を擁する巨大マーケットASEAN

2013年09月17日

山口 幸治

アルー株式会社 グローバル・ソリューション部マネージャー 山口 幸治

京都大学大学院人間・環境学研究科修了(応用生理学専攻)、読売新聞大阪本社入社。島根県松江支局にて、県警記者クラブに所属、県内の事件・事故の取材を担当。その後、兼松株式会社に入社。米国産・カナダ産の食品の輸入通関業務・営業・品質管理などを担当、北米地域有数のグローバル企業との交渉に従事。2011年アルー株式会社に入社、中国・インド・シンガポールなど海外事業全般を担当。


インドネシア、ベトナムが成長株

2015年の域内関税撤廃を控えて一体感を増し、消費市場としての魅力度が高まるばかりのASEAN地域。これまで自動車・家電業界と比較して内向きであった日本の食品・小売業界においても進出の動きが近年加速してきた。一方で、進出に伴い、同地域で活躍する人材の育成が日本企業にとって喫緊の課題となっている。

ASEAN地域

ASEAN地域の魅力はなんといっても6億人を擁する巨大市場である。これは、EU(欧州連合)の5億人を超える規模である。中でも2億5000万人のインドネシア、9000万人のベトナムなど、本格的な成長段階を迎え、消費意欲旺盛な厚みのある中間層を形成しつつある国を抱える。

一方で、一口にASEAN と言っても、様々な民族、宗教、文化が入り混じる複雑な市場である。宗教で見ても、インドネシア、マレーシアのイスラム教国、タイ、ミャンマーなどの仏教国、キリスト教国のフィリピンと多様である。日本の食品・小売業界にとっては、イスラム教徒に対しては、格段の配慮が求められる。アルコールや豚肉の摂取が禁じられている上、ハラール認証も必要である。また、日本を上回るGDP を擁する先進国のシンガポール、中進国マレーシア、製造業としての地位を築き始めたベトナム、最近ようやく脚光を浴び始めたミャンマーと成長のステージは国により様々である。

エースコックとヤクルトが成功

そうした環境の中で、他企業に先行して進出した日本の食品・小売業界において成功事例がみられている。

ベトナムの即席麺市場の規模は、2012年時点で50億食と日本の54億食に迫る勢いである。この有望な世界4位の市場で6割のシェアを占めるのがエースコックである。同社は93年に事業を開始、低所得者層から中所得者層まで多様な商品を揃え、日本と異なる現地のニーズを捉えている。また、ベトナムで培ったノウハウを元にカンボジアやラオスにも進出、今後はミャンマーも視野に入れている。

ヤクルトはインドネシアに1991年に進出。現在では、ASEANで最も大きい事業国となり、販売を担う「ヤクルトレディ」約4500人を誇り、伸び悩む国内市場を尻目に順調に乳酸菌飲料「ヤクルト」の販売本数を伸ばしている。

英語と現地語を習得する

こうして日本食品・小売企業は成功事例を積み上げつつあるが、ASEAN地域で活躍できる人材の要件について述べる。まずは言うまでもなく英語力であり、インドネシア語やベトナム語などの現地語の習得もできれば取り組みたい。特に現地語については、現地の生活習慣の理解に大いに役立ち、販売戦略や現地人材マネジメントにおいて助けになることは間違いない。続いて異文化理解力および多様性の受容である。先ほども述べたように、ASEANは、多種多様な民族・宗教・文化が存在する市場である。それぞれの国の背景に着目し、戦略とマネジメントを実行できる人材が必要となる。

グローバル人材はアジア新興国で育てる

アジア新興国

それでは、そのような人材を育てるにはどのような育成施策が考えられるであろうか。当社はASEANのみならずアジア全域で活躍できるグローバル人材育成の専門家として、実績を積み重ねてきたが、食品・小売業界だけではなく、幅広い業界および階層における実績をここで紹介する。

大手飲料・食品メーカーにおいては、進出を検討しているインドに中堅のエース級人材を1年間派遣。英語とヒンドゥー語の語学研修を経て、現地企業でのインターンを実施。研修後に現地拠点を立ち上げることができる即戦力人材の育成に取り組んでいる。

大手製造業では、関連会社も含めた100人あまりの新人をインドネシアなど3カ国に派遣、成長のキードライバーであるアジア地域を新人の早い段階で経験させる「原体験」を積ませている。

また、当社ではASEANのハブ拠点のシンガポールにおいてアジアのトップ人材と交流ができる公開講座を実施している。参加実績国・地域は中国・インド・シンガポール・インドネシア・タイ・ベトナム・台湾で、グローバル企業などから集まった優秀な人材との他流試合の機会を、日本人ビジネスパーソンに提供している。

グローバル市場と言えば、これまでは欧米が同義語であったが、これからのグローバルの舞台は、ASEANをはじめとしたアジアが中心である。したがってグローバルに活躍する人材はアジア新興国で育てるのが当社からの提案である。

ASEANは、これまで自動車・家電業界が築いてきた「Made in Japan」の高い信頼性と、親日的な国民感情に支えられた日本企業にとって有利な市場であったが、韓流コンテンツを先兵に洗練された商品イメージを売り込む韓国、低価格を武器に市場の浸透を目論む中国とライバルは多く、日本企業に残された時間は少ない。

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