コラム : 日本企業がインドネシアで勝つために

2013年08月20日

Muhammad Arfian ムハンマド・アルフィアン

PT. ALUE INDONESIAディレクター
Muhammad Arfian ムハンマド・アルフィアン

インドネシア国籍、一橋大学商学部卒、一橋大学大学院国際企業戦略科終了MBA。
A.T. カーニー株式会社を経て、コンピュータ・セキュリティ会社とインドネシアの地方自治体公社にて新規サービス開発・戦略立案・投資誘致の一連業務に従事。現職アルーにおいて、インドネシアにおける日系・現地企業に対して組織開発・チェンジマネジメント・人材育成コンサルティングを手がけている。日本からの海外派遣研修受講者に対してインドネシア文化・ビジネス動向等の講師として、グローバル人材育成に携わる。日本で16年間過ごした後、2007年帰国。日尼の働く文化への理解と適用が強みである。


インドネシア

「終身雇用」を評価しないインドネシア人
「言われたこと以外やらない」「部下を叱れない」

日本企業がインドネシアで直面している課題としていくつかのことが挙げられる。人事・人材側面からみると、インドネシア人の雇用への意識や、仕事への意識、日本人との価値観の相違がある。

 雇用への意識において、多くの日系企業はインドネシア人社員が終身雇用をあまり評価しないことに悩んでいるという。特に最近になってインドネシア経済が著しく成長していくにつれ、多くの日系企業がインドネシアに参入しており、人材の取り合いが激しくなっている。優秀な人ほど条件のいいところに転職していくケースがよく見られるようになってきている。

仕事への意識に関しては、プロセスを重要視せず、ショートカットがあればすぐに楽な方向に走る。

また、言われたことはやるけれど、自分の仕事がより効率的かつ効果的になるためにあまり先駆けてやることがないなど、日系企業の頭痛の種になっている。「作業指示書にちゃんとプロセスが示されている。それに従えば製品の品質が保てられるのに、現場のワーカーは自分の都合にいい方法でやる」や「マネージャーやスーパーバイザーが作業を監視に来るときは、きちんとやるが監督者が現場を去れば作業員はもとの仕事の仕方に戻る」というような「愚痴」がよく聞かれている。

これは一般社員に限らず、管理職にでも見られるため、事の重大さが増している。

会社員としてあまり意識せず、個人としての意識が強いということが日本人とインドネシア人との価値観の相違である。会社をどのように大きくするか考える前に自分がいくらもらえるかという意識が高い。そのため、賃金値上げに関する労使紛争がよく起きている。最近は賃金値上げにおいて労働組合の活動がより活発なものになってきており企業が事業を推進する上で障害となっている。

これらの課題は特定の企業だけに限らず発生しており、インドネシアに参入しようと
している日本企業、またはすでにインドネシアで事業展開している日系企業も避けて通れないことであろう。この現実に向けて何をすればこれらの課題を乗り越えられるか。

ポイント1:将来的な保証と安心が組織会社への帰属意識を高める

終身雇用を評価しないといわれるインドネシア人だが、現実的にみると、終身雇用と保証を与える公務員は一番人気の仕事になっている。

要するに、組織や会社等が自分に対して、将来的な保証と安心を与えてくれると見なせば、インドネシア人もその組織・会社に対して帰属意識が高くなり、簡単に組織・会社から去ることはしない。日系企業もインドネシア人社員にこういった保証と安心が与えられるように行動するべきであろう。例えば、会社が将来インドネシアで目指す姿と社員にどんな人になれて、何のメリットがあるかを最初から従業員に共有して共感させ、実現に向けて絶対的なサポートが欲しいと求めればインドネシア人の従業員に受け入れられる。実現可能な夢を見せて、従業員に
一体感を感じさせることは容易なことではないが努力すべきである。

しかし、市場においては成長が見込まれ、将来的な姿も相対的に描けるので目指す夢を共有することが可能であろう。

ポイント2:各役職に必要な能力や期待を明確に伝える

「いわれることはやるがそれ以上やらない」は明確な期待が伝えられないからである。

アルー・インドネシアが多くの在インドネシア日系企業にヒアリングしたことから得た情報として、社内の各役職において明確なジョブディスクリプション(職務記述書)がないということが分かる。

ケースとして、社員がアシスタント・マネージャー(係長)からゼネラル・マネージャー(部長)まで昇進したが、仕事内容は全然変わらない。会社側も各職種に必要な能力や期待される職務内容や賞罰等をきちんと用意せず社員に提示していない。また、社員を昇格する基準も明確になっておらず、勤務年数ベースにやっているところが多々ある。このような状況の中でインドネシア人社員が日本企業の標準的な行動をすることはやはり難しい。

これは会社・社員間の基本的なコミュニケーション問題であり、文書化されたコミュニケーションを徹底的にやることを薦める。また、社内のいろいろなイベント(ミーティング、研修等)を通して親密な仕事関係を構築することで経営者の社員に対する期待がより理解されて、仕事の進め方の改善につながる。

ポイント3:問題や改善すべきことを指摘できるリーダーの存在

リーダー・管理職育成

プロセスを重視せずショートカットにすぐ走る社員に対しては規律が必要である。問題は規律をきちんと守るためにいいことだけではなく問題や改善すべきことを指摘できるリーダーの存在が欠かせない。

よく言われるのは、インドネシア人のリーダーとスーパーバイザーが部下をしかれないことである。日系企業は部下に問題をちゃんと指摘して、また場合によってしかることができるリーダー等職長・管理職を育成する必要がある。部下にプロセスを従う必要性を説明して納得させることができるリーダーは製造業でもサービス業でも重要な存在である。


ポイント4:異なる文化・価値観・多様性の受容

価値観の相違はあらゆる場面で存在している。会社員と個人に対する価値観の大きなカテゴリーの相違から、時間厳守や仕事上の問題への見方の違いなど、いわゆる日常的な相違までがある。

インドネシア人が見た「会社」は日本人とは異なり、「会社」は目に見えないものとなっており、それよりも個人の方がリアルな存在であるとみなされる。これは会社が生活の大事な存在としてみなせる日本人と異なり、会社への「忠誠心」も違ってくる。それぞれの背景となる各文化が違い、価値観も異なるという現実を受容することが重要である。

ただ、やりすぎてもいけないのである。現地社員が主張しすぎてはいけないので、彼らはグローバル企業の一員としての自覚を持たせることが大事である。例えば賃金値上げばかり求めることに対して、会社側もしっかりとした立場で、彼らに企業存続や成長にどのような影響を与えるかについてきちんと説明して理解を求めるのが正しい姿である。

コラム-テーマ別

レポート-テーマ別


「 日本企業がインドネシアで勝つために 」のトップへ