コラム : 日本の外食企業が中国で勝つために 克服すべき「真の課題」 [前編]

2013年05月27日

アルー株式会社グローバル企画室リーダー 孔 令愚

アルー株式会社グローバル企画室リーダー 孔 令愚

埼玉大学工学部卒、日本大学大学院にて、グローバルビジネス研究科修了、経営学修士取得。
日本マクドナルド株式会社に入社し店長として年商3億円の店舗運営に携わった後、大学院にてMBA取得。その後、人材開発コンサルタントとして、育成体系構築や、講師登壇を務める。


13億人の人口を誇り、年々高い成長率で急速に拡大している中国の外食市場は日本企業にとっても大きな可能性を秘めた魅力的な市場のはずである。

しかしながら、昨年の反日デモの暴動による影響で中国進出に二の足を踏んでいる企業も少なくない。だが、中国進出を検討している日本の外食業界にとって注意すべきは本当に政治的なリスクだろうか?

実際に中国の現地で過ごしてみると確かに日中間の領土問題が日々ニュースを賑わしている一方で、相変わらず中国人から根強い人気がある日本料理店や日本の外食チェーンが数多く存在している。その半面、中国に進出したものの思うほど事業が拡大しておらず、現地で苦戦している日本の外食企業も少なくない。
では中国で勝てない日本の外食企業は一体どこに問題があるのだろうか?

「日本と同じレベル」で運営できる仕組み

日本の外食企業にとって中国で成功するために克服すべき最大の課題は「現地化」と「人の育成」であると考える。

日本の外食業界は世界的に見ても品質や接客のレベルが高く、かつ近年中国の消費者が最も関心を持つ「食の安全性」についても高い信頼性を誇っているため、本来は中国の外食市場でも抜群の競争力を持っているはずである。

しかし、それを実現するためには、「日本と同じレベル」の運営を中国でも行うことが不可欠である。店舗数が少ないうちは日本人が直接中国に赴くことで現地の中国人従業員を管理して指導し、日本の基準で店舗運営を行うことが可能だが、多店舗の展開を目指すとなるとどうしても「中国人が中国人を管理する」必要があり、その際に中国人が日本の基準で店舗を運営できるように、できるかどうかがカギとなってくる。

もし中国人に店舗の運営を任せても、日本で求められるような基準で調理や接客が出来ない場合、看板は日本企業でも現地のお客様から見たら地元の飲食店と何ら変わらないレベルに成り下がる危険性がある。

とはいえ、そのリスクを恐れて中国人に運営を任せることが出来ない場合、いつまでも日本人が現地に張りつくことになり、店舗数を大きく増やすことが出来ない。

このジレンマを解消する唯一の方法は「現地で運営を任せられる中国人の人材を先に育成しておく」であり、中国での事業の拡大を見据えて必要な人材を予め用意しておくことで初めて中国市場のスピードに対応した事業展開が行える。

とはいえ、現状を見てみると事業拡大の後追いで人材育成を行っていることが多い。
よく見られるケースが本格的な人材育成を行わないまま店舗を増やし、店舗数の増加を反比例する形で店舗の運営レベルが下がり、結果的に業績が伸び悩んで事業拡大のペースが止まることである。

中国での価値観を踏まえて、「背景」や「理念」を教えられる〝中国人の育成担当〟が不可欠

一方で、中国市場で成功している欧米や台湾の外食企業を見てみると戦略的に人材育成を行っており、将来の事業展開を見据えた投資を行っている。

日本企業がこのような状況に陥る背景として、「人は現場で自然に育つ」という日本独特の文化も影響しているのではないかと考える。

その理由として日本人の平均的な資質の高さが挙げられ、外食に従事する人材も現場で仕事をする中で自主性を発揮して成長していくことが多いが、中国の場合は教育レベルや資質の個人差が大きく、また成長への意欲も人によって異なるため、会社のほうから意図的に働きかけないとレベルの低いまま仕事を続けることになり、いつまでも成長しないことが見受けられる。

人を育てる必要性が認識できたとしても、もう一つ注意すべき課題がある。それは人を育てる際の日本と中国のアプローチの違いである。

日本では教えたことに対して多くの場合従業員は忠実に守り実行するが、中国人の場合はいくら「このやり方でやりなさい」と教えても、彼ら自身で必要性を感じない限り現場で徹底することは難しい。そのため、中国で従業員の教育を行う場合、「なぜそれが大事か」を徹底的に教えた上で相手のモチベーションを引き出す手法が必要になってくる。

特に今後外食業界で主力人材となるのは「90後」と呼ばれる年代層の若者であり、彼らは特に「自分がやりたいこと」に対するこだわりが強いため、上から押し付けるタイプの教育には反発しがちである。

そのため、中国で効果的に人材育成を行うためには単に知識やスキルだけでなく、中国の価値観を踏まえて「背景」や「理念」を教えられる「中国人の育成担当」の存在も不可欠である。このような人材を育成しておくことで、日本企業が本来最も重視している企業理念が初めて中国人に浸透させることができる。

日本の外食文化は中国人にとって大変魅力的なものであり、これらの課題を克服することが出来れば中国の外食市場において日本企業の存在感が高まることも充分に期待できると考える。

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