コラム : 日本の外食企業が中国で勝つために 克服すべき「真の課題」 [後編]

2013年05月27日

アルー株式会社グローバル企画室リーダー 孔 令愚

アルー株式会社グローバル企画室リーダー 孔 令愚

埼玉大学工学部卒、日本大学大学院にて、グローバルビジネス研究科修了、経営学修士取得。
日本マクドナルド株式会社に入社し店長として年商3億円の店舗運営に携わった後、大学院にてMBA取得。その後、人材開発コンサルタントとして、育成体系構築や、講師登壇を務める。


現地で採用した従業員を活かす方法

日本の外食企業が海外に進出した際に最もよく聞く悩みが「現地で採用した従業員の扱い」である。

これらの課題はいずれも仕事の力量面や意識面で現地人従業員が日本人と大きく異なることに起因しているが、一方で現地人従業員に対する教育や人事制度ばかりに注力しても事態がなかなか改善されないというケースも数多く見受けられる。

外食産業に限らず、日本企業が海外に進出際に現地人従業員に対して教育投資を行うことがあっても、意外と疎かになりがちなのがリーダーとして赴任する日本人に対する教育である。

日本人が海外に赴任する場合、多くは現地人従業員よりも上の立場で赴任することになるため、現地人従業員から見たらまさしく「リーダー」に他ならない。しかし、実際は赴任する本人は実務担当者としての意識が強いことが多く、リーダーとしての自覚が弱いまま現地人従業員の前に立ってしまう。

その場合、現地人従業員の目から見てまさしく「頼りないリーダー」として映ってしまい、影響力を発揮することが非常に難しくなる。ある事例では、日本人が店に居るときは現地人従業員はきちんと基準を守って仕事に取り組むものの、日本人が居なくなるとたちまち好き勝手にやり出してしまい、お客様のクレームが発生してしまうということがあったが、これは単純に従業員たちの意識が低いというよりも、日本人のリーダーとしての存在感が薄いため、彼らの中に「見ている前でちゃんとやればいいや」という程度の意識しか持たず、仕事の質が適当なものになってしまっている。

一方で「リーダー」としての存在感を発揮し、現地人からも尊敬されている日本人の場合、例え本人が現場で見ていなくても従業員は自ら「この人の期待を裏切るわけにはいかない」、「この人が言ったことだからきっと大事だ」という意識を持ち、仕事の基準を徹底的に守ることが出来る。

そのため、現地に赴く日本人が現地人から「リーダー」として認識されるかどうかが現地人従業員を効果的に扱うためのカギである。

「影響力」のあるリーダーになる

では、日本人が海外で「リーダー」として振舞うためには何が必要だろうか?影響力の発揮の仕方については人それぞれ異なるが、海外で活躍している日本人を見ていると少なくとも以下の三点を身につけることが必要と考える。

リーダーに必要なもの
  1. 論理的コミュニケーション力
  2. 異なる価値観に対する受容
  3. 自身の「思い」を伝える発信力

ポイント1:論理的コミュニケーション力

現地人とのコミュニケーションにおいて最もすれ違いが生じやすいのは語学力よりも日本人特有のコミュニケーションに起因することが多い。例えば日本人同士なら「客席をきれいにして」という一言で「何を」「どこまで」やるかがほぼ問題なく伝わることがあるが、現地人の場合は「床にゴミやシミが無い」、「テーブルの上が全て拭いてある」、「イスが揃えられている」という伝え方をしないと日本人が期待した基準でやってくれないことが多い。そのため、コミュニケーションにおいて5W2Hを正しくに伝え、結論と根拠を明確にする論理的なコミュニケーション力が求められる。

ポイント2:異なる価値観に対する受容

日本人と現地人ではそもそも「大事にしていること」が異なるが、同質な文化で育った日本人はつい「自分が大事にしていることは相手も大事にするべき」という前提で接してしまうことがある。

例えば日本人から見て現地人が時間にルーズであると感じた場合、一方的に「現地人が間違っている」と責めるのではなく、自分と相手の時間感覚がそもそも異なることを自覚した上で、相手に時間を守って欲しい場合は「なぜ自分は時間を守ってほしいのか」「なぜ時間を守ったほうが良いか」を相手の立場で説明することが効果的である。

日本人から見て異質な現地人の価値観に接した場合は否定をするか無理に合せるかということが起こりがちだが、「どっちが正しい」ではなく、「お互い違う」という意識で接することで異なる価値観を受容して乗り越えることが出来る。

ポイント3:自身の「思い」を伝える発信力

現地人従業員が最も気にしていることは「リーダー自身の言葉」であり、「自分はどうしたいのか」を自分の言葉で伝えることが自身の影響力を発揮する上で大切なポイントである。

よく日本人赴任者が「これは本社で決めたことだから」という言い方をするが、これでは現地人から見てその人自身の存在感が感じられなくなる。

そのため、会社の理念にしても方針にしても自分自身の言葉で現地人従業員に語りかけることが現地人に思いを伝える最も重要なことである。

以上三点は決して難しいことではないが、日本の仕事環境では自然に身につけにくいため、意識的に「日本人リーダー」の育成を行うことが海外進出について成功につながるのではないかと考える。

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